歴ブロ 息抜き編 日本全国の化け狸たち 〜前編
※今回は少し思うところがあって、実話に基づいていない形式で書いております。各話の正体が知りたい場合はそれぞれの狸のWikipediaを御覧ください。
1.日本三名狸
文化祭にて
〈歴山敬史〉
ポンポコリン♪2年3組のお化け屋敷はこっちだよ〜
〈文野結化〉
あれ?もしかして敬史?何その格好⁉︎
あ、結化
ふう・・・ああ疲れた。全く、クラスの奴ら俺にこんな役を押し付けやがって・・・
ああ、そういえば言ってたね。お化け屋敷で狸の役目やらされてるって。
本当は文化祭なんか参加したくなかった・・・
まあまあ・・・そう言わずにさ、もうすぐシフト交代でしょ?
ああ、もう終わりだよ。
そういえば妖怪と言ったら狸は定番だけど、どんな伝説が有るんだろう?敬史知ってる?
うーん狸だと、日本三名狸が有名だね。
日本三名狸?
へえーどんなのか教えてよ。
わかった。順に説明していくね。
2.佐渡の団三郎狸
団三郎狸https://ja.wikipedia.org/wiki/団三郎狸より
まず最初に紹介するのは、佐渡島を根城にしていたと言われる団三郎狸だよ。一言で特徴を述べるとするならば「三名狸のなかで一番横着者かな。」佐渡では狸のことを狢(むじな)とも言ったから団三郎狢とも呼ばれているんだ。
そうだね。実はこれも狸伝説に深い関わりが有るんだけどそれは後で話すとして、先に伝説の方から見ていこう。
団三郎狸は佐渡の狸の総大将で、かなりのいたずら好きだったんだ。
例えばどんなことをやったの?
人が夜道を歩いているときに壁を作り出したり、蜃気楼を使って人を馬鹿したり、木の葉を金に見せかけて買い物をしたりと言ったものだね。
うわ・・・かなり古典的な伝説ね。
まあここまではほとんどの人が知っているんじゃないかな。もちろん、団三郎狸は悪さもしたんだけど、その一方で人助けもしたんだ。
化け狸が人助け? 嘘でしょ(笑)
いや本当だよ。その証拠に現地の人は今でも彼のことを二つ岩大明神として祀っているんだ。
例えば?
そうだね・・・例えば貧しくて困った人には金を貸していたんだ。借用書に金額、返却日、自分の名を記して判を押して置いておけば、翌日にはその借用書は消え、代りに金が置いてあったらしいよ。
へー良いこともするんだ。
でも、その金は人に化けて金山で働いたり、盗んだりして稼いでいたんだよね。
所詮は化け狸なんだね。
流石に怒った人間が反撃をしたこともあったんだ。ちょっとこれを見て。
団三郎が若い農夫を見つけ、彼を化かそうと団三郎は若い女に化け、具合の悪そうなふりをした。心配して声をかけてきた農夫に「腹痛で動けない」と答えた。農夫は女を送ろうと背負ったが、もしや団三郎かと直感し、女を縄でしばりつけた。慌てる団三郎に「お前さんがずり落ちないように」と答えた。危険を感じた団三郎は「降ろして下さい」と必死に頼んだ。「具合が悪いのに、なぜ降りる?」と農夫が降ろさずにいるので、団三郎は「……おしっこがしたいのです」と答えたが、農夫は笑い「お前さんのような美しい娘さんのおしっこならぜひ見てみたい。わしの背中でしなされ」と一向に降ろさなかった。やがて着いたのは農夫の自宅だった。団三郎が「ここは私の家ではありませんが?」と言うと、農夫は「団三郎、もうお前の正体はわかっている!」と言い、平謝りする団三郎を散々懲らしめた。以来、団三郎が人を化かすことはなくなったという。
(Wikipediaより)
退治したのは良いんだけど、農夫も変態だなあ・・・
まあまあそう言わず。ちなみに、佐渡には狐がいないんだけど、これも団三郎狸の仕業であるという話があるんだ。
団三郎が旅の途中、キツネに出会い「佐渡へ連れて行ってください」と頼まれた。団三郎は「連れて行ってはやるが、その姿ではまずい。わしの草履に化けなさい」と言った。キツネは言われた通り草履に化け、僧姿の団三郎がそれを履いて船に乗った。やがて団三郎は佐渡へ渡る舟に乗り、海の真っ只中で草履を脱いで海に放り込んだ。以来、キツネは佐渡に渡ろうとは考えないようになった。
(Wikipediaより)
え、酷い!
ハハハ、まあ確かにね。でも、狸からしたら自分たちの縄張りを荒らされては困るから、至極当然といえば当然なんだけどね。あと、こんな話もあるよ。
団三郎は旅の途中で1匹のキツネに会った。自分の術を自慢するキツネに対し、団三郎は「自分は大名行列に化けるのが得意なので、お前を驚かせてやる」と言って姿を消した。間もなく大名行列がやって来た。キツネは行列の中の殿様の駕籠のもとに躍り出て「うまく化けやがったな」などとからかい、たちまちキツネは捕えられ、狼藉の罪で斬殺されてしまった。行列は団三郎ではなく本物であり、彼はあらかじめ行列がここを通ることを知っていたのである。
(Wikipediaより)
なんか酷いことばかりやってるなあ・・・
まあ、たしかに団三郎狸の逸話は結構エグいものが多いからね。それじゃあ次は淡路の芝右衛門狸について話していくよ。
3.淡路の芝右衛門狸
次に紹介するのは淡路島の芝右衛門狸だね。実は彼には大きく分けて3種類の伝説が有るんだ。兵庫県に伝わるものと徳島県に伝わるもの、そして絵本百物語に伝わるものだね。
へぇーなんでなんだろう。
これは僕の勝手な推測だけど、淡路島の地が四国と本州の中継地点だったからじゃないかな。淡路島で生まれた伝説がそれぞれに伝わって、違う伝説になったんだと思うよ。
まずは、兵庫県に伝わるものから話していこうか。
うん。
まず、芝右衛門狸は淡路島洲本市の三熊山の山頂に妻のお増と一緒に住んでいて、月夜には上機嫌で腹太鼓を打っていたらしいんだ。
芝右衛門狸もいたずらをしていたの?
うん、彼も葉っぱを金に見せかけて買い物をする等の小さな悪さは働いたんだけど、山中によって迷った人を案内したりもしたから、そんなに嫌われてはいなかったみたいだね。
さっきの団三郎狸よりは良心的だったのかな。
そうかも知れないね。そんなある日、芝右衛門は浪速(今の大阪市)の中座で大人気の芝居があると聞き、お増と共に人間に化けて大阪へ渡ったんだ。
うん。
初めて踏む地である大阪を見物する内に2匹はすっかり陽気になり、化け比べをすることになったらしくて、まずはお増が大名行列に化け、芝右衛門の前を通り過ぎたんだ。
あれ?どこかで聞いたような・・・
続いて芝右衛門が化かす番。お増の前を長い大名行列が続いた。お増が「うまいうまい」と声を上げて褒めたところ、たちまち行列の1人に斬り殺されっちゃったんだ。行列は芝右衛門ではなく本物だったんだよ。
やっぱり・・・
悲嘆に暮れた芝右衛門は淡路へ帰ろうとしたんだけど、せめて最後にお増も見たがっていた芝居を見ることにして、術で木の葉を金に変え芝居小屋へ通うようになったんだ。でも、芝居小屋では毎日の入場料に木の葉が混ざっていることから、タヌキが人間に化けて紛れ込んでいると疑い、番犬を見張らせることにしちゃったんだよね。
あっ・・・
芝居見物も今日を最後にして淡路へ帰ろうと、芝右衛門が小屋へやって来ると、大の苦手な犬がいたんだ。芝右衛門は恐怖心を隠しつつ入口を通り抜けたけれど、その安心した隙をついて犬が襲い掛かってきた。驚いた芝右衛門は变化が解けてタヌキの姿に戻ってしまい、犬を連れた人々に追い回され、遂には頭を殴られて命を落としちゃったんだ。
あーあ・・・
淡路には大阪で化け狸が殺された噂が届いて、芝右衛門の腹鼓が聞こえないことから、彼が殺されたとわかり、淡路の人々は口々に彼の死を惜しんだらしいね。
人望(?)があったんだね。
芝右衛門の死後、中座では客の入りが悪くなり「芝右衛門を殺した祟りだ」と噂が立ったので、芝右衛門を芝居小屋に祀ったところ、また客足が良くなったんだ。以来、芝右衛門は人気の神として中村雁治郎、片岡仁左衛門、藤山寛美といった多くの役者たちに厚く信仰されてきたんだよ。
後に芝右衛門の里帰りと称し、寛美や仁左衛門らの寄進により洲本市に芝右衛門の祠が建てられたんだ。現在では芝右衛門の祠は三熊山の山頂にあり、芝居好きであった芝右衛門の伝説から、今なお芸能人の参拝が多いんだ。中座に祀られていた「柴右衛門大明神」も2000年に「里帰り」し、現在は洲本八幡神社に祀られているんだよ。
機嫌が治ってよかったね。
それじゃあ次に、徳島県に伝わるものについて話していくね。
うん。
江戸時代に、阿波国(今の徳島県)の勢見山の麓の観音寺の境内で芝居興行があったんだけど、ある夜、芸をするための犬たちが客席の方を吼えてばかりで一向に芸をしなかったんだ。
犬ってことはもしかして・・・
そうこうしているうちに、その中の1匹が客席に飛び込んで、1人の武士に襲い掛かって死に至らしめてしまったんだ。犬が武士を殺したと大事になりかけたんだけど、役人が武士の亡骸を検分したところ、懐の紙に「淡州先山芝右衛門」という実在しない武士の名が書いてあったんだ。さらに懐には柴の葉が10枚ほどあったらしいよ。
ってことは・・・
たぶん想像通りだとは思うけど、翌朝に役人が再び検分に訪れると、武士の死体はタヌキに変わってしまっていたんだ。つまりこの狸こそが芝右衛門狸だったということだね。
そのとき阿波では化け狸の2大勢力の大戦争・阿波狸合戦があったから、芝右衛門狸はどちらかの軍に力を貸すために淡路島から阿波を訪れたのだろうと噂されたんだってさ。
これに関しては次の項で説明する太三郎狸も絡んでいるから、次回話すことにするよ。
おっとそろそろ私シフトだわ。行かないと。
それじゃあ次はまた今度にしようか。
うん。
参考文献などは次回書きます。